旅先で、扉の向こうで…。

物心ついてから中学校に上がるくらいまで、
父に連れられて、
おおよそ週に3回くらい
いつものなじみの喫茶店に連れて行ってもらった。

「ブルースカイ」という名前の、
カウンターと小さなテーブルがある喫茶店。

いつも近所のおじさんたちが
いつの間にか集まっていて
父は楽しそうにお喋りをしながら
サイフォンで淹れたコーヒーを飲んでいた。

私は、いつものクリームソーダ。

緑色のきれいなグラスにきれいに丸くおさまった
真っ白のアイスクリームに、
取っ手の長い銀のスプーンをさすと
とたんにぶくぶくと泡が溢れてきて
それを口ですくって食べる。

甘くすっぱい幸せが口いっぱいに広がる…。

壁にはコーヒー豆をたくさん貼り付けて描かれた
世界地図が飾ってあった。
大人たちが話に夢中になっているあいだに
太平洋の真ん中にある島のあたりを
人差指でカリカリと穿ると
茶色いコーヒー豆が2~3粒
ポロリと外れる。
それをポケットに入れて持って帰り
”戦利品”を一粒ずつ
自分の部屋にある地図に張り付けていく。

不思議に、ブルーススカイの世界地図は
私が持ち帰って欠けた部分にも、
いつの間にかきちんと豆が張り付けてあった。

きっと大人たちは、私のイタズラを
知っていたのだな…。

私の部屋の世界地図が
きれいにコーヒー豆で埋め尽くされて完成するころ
ブルーススカイは
いつのまにか”閉店”していた…。

父は喫茶店が好きだったな。

30年前の記憶が廻り廻って
私は今コーヒービジネスの中にいて
世界を駆け巡る。

私がコーヒーの香りが好きなのは
その中に父の面影を見るからだろう。

カランと音がして重い扉が開けば
心地よいコーヒーの香りがする…。
喫茶店はたくさんの笑顔が集まるところ。
ひと時の安らぎを求めて
いつもの時間にいつもの椅子に座る。

父の思い出…。

旅先。

東京、新宿の夜。

漢字で書かれた”珈琲”の文字がふっと目につき
暗く狭い階段をおりて
重たい扉をあける。

頑固なマスターが丁寧に淹れてくれたコーヒー。
手作りのシフォンケーキ。
懐かしいサイフォンの音と香り…。



30年の月日が廻り廻って
父のいない喫茶店に座り
たまにはクリームソーダの泡をすくってみようかな。

きっと甘くて
せつない思い出の味が
口いっぱいに広がる。

俺は、おやじっ子なんだな・・・。


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